(みややまじょう)
市指定史跡(勝間田氏の墓)
牧之原市道場
▲宮山城は文明八年(1476)に今川義忠の侵攻を受けた
勝間田氏が最期の一戦を遂げた所として伝えられている。
(写真・城があったとされる道場山)
勝間田氏最期の地
牧之原市の中央を駿河湾に向かって流れる勝間田川の周辺域は古くからの土豪勝間田氏の支配領域である。上流域には勝間田氏の本城といえる勝間田城があり、中流域には穴ヶ谷城が築城されている。そして河口近くには勝間田氏の菩提寺として勝間田長清が開基となった時宗の清浄寺(しょうじょうじ)があり、鎌倉時代には勝間田道場として栄えた。現在でも清浄寺周辺は牧之原市道場という地名になっている。この清浄寺の背後の丘陵地が道場山又は東西山と呼ばれるところで、宮山城のあった所とされており、勝間田氏らが今川氏との最後の一戦に及んだ合戦地とされている。 郷土史家桐田榮氏の手になる大著「勝田(かつまた)氏物語」に文明八年(1476)の今川義忠との戦いの様子が記されている。一般的には横地氏と勝間田氏の連合軍が見付端城(磐田市)に立て籠り今川義忠に攻め落とされて滅び去ったとされている。そしてその帰還中に塩買坂で義忠は残党に襲われて落命したといわれている。しかし同書によれば、確かに見付端城には横地・勝間田が籠城しているが、これは横地・勝間田両氏の熟知する牧之原へ今川勢を誘うための陽動作戦ではなかったか、としている。 同書は続ける。大井川を渡った今川義忠は久野佐渡守、奥山民部少輔、杉森外記、三浦次郎左衛門、岡部五郎兵衛ら五百余騎を率いて遠江に侵攻、直ちに勝間田城の攻略に取り掛かった。勝間田城の落城伝説として、まずは勝間田川上流から今川勢の猛攻を受け、これを押し返すために城兵が城外へ突出した時、台地焼原から別の今川勢が殺到、腹背から敵を受けたために支えきれずに城を捨てて戦線を離脱、穴ヶ谷城へ向かったという。しかし、そこも危うい状況にあり、勝間田勢はさらに下流の秋葉山下(牧之原市勝俣/秋葉神社)に集結した。ここで勝間田勢は道場山を背に今川勢との決戦に至り、ついに勝間田修理亮以下多くが討死して果てたとしている。 宮山城というのはこの道場山にある熊野神社のことであろうと推定されている。ただし、城郭としての遺構は確認されていない。柵を結った程度のものであったのかもしれない。この戦いの後、勝間田氏は四散亡命したとされる。 道場山の中腹には勝間田氏の墓塔群が一所に集められていた場所が残されており、現在では山麓の清浄寺境内の覆堂の中に並べられている。墓塔の多くは鎌倉末期から南北朝期にかけてのものであるが今川勢との最後の戦いで戦死した者たちの供養塔も含まれているとされ、熊野神社(宮山城)周辺からは大量の人骨も出土したという。 ちなみに、勝間田氏を滅ぼした今川義忠は横地城(菊川市)を攻撃して横地氏も滅ぼしてしまった。そして帰還のために相良へ出ようと塩買坂に来たところで横地・勝間田の残党に襲われて戦死したということである。したがって義忠は見付まで兵を進めなかったことになる。残党というのは見付端城に籠っていた兵が郷土の危難に駆け付けたものかもしれない。 現在、清浄寺の裏手山腹に勝間田氏の墓(市指定史跡)があり、さらに登るとかつて墓塔が集められていた場所が残されている。そこから熊野神社へ上る道が付けられている。確かに熊野神社の社殿周辺には城郭としての景観は見られない。そしてさらにその裏手を上がると道場山の丘陵部である。一面の茶園であるが、茶の木の伸び具合を見るとここも耕作放棄状態かと思われ、残念でならない。 |
![]() ▲山麓にある時宗寺院の清浄寺。 |
![]() ▲清浄寺由来。「勝間田氏は道場山で今川義忠を迎え撃ったが遂に亡びる」とある。 |
![]() ▲清浄寺墓地の上段に整理された「勝間田氏の墓」。 |
![]() ▲前列の立派な五輪塔は鎌倉末期から南北朝期のものとされ、後列に並べられている墓塔は明治以後に土中から掘り出されたものであろうか。 |
![]() ▲指定文化財「勝間田氏の墓」説明板。 |
![]() ▲現在の「勝間田氏の墓」からさらに上がるとかつて五輪塔群が置かれていた場所がある。 |
![]() ▲この石垣の上に五輪塔が置かれていた。 |
![]() ▲石垣のすぐ近くには熊野神社へ上がる階段が設けられている。 |
![]() ▲熊野神社。宮山城の名の由来とされている。 |
![]() ▲神社周辺はなだらかな傾斜地で、城郭としての雰囲気は感じられない。 |
![]() ▲神社の裏手は道場山(東西山)の山稜で、茶畑となっている。 |
![]() ▲道場山から南を見ると駿河湾が見渡せた。 |
----備考---- | |
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訪問年月日 | 2025年5月13日 |
主要参考資料 | 「勝田氏物語」 |
↑ | 「遠江武将物語」他 |